今回は人工呼吸器関連肺炎(VAP;ventilator associated pneumonia;以下VAP)についてです。

VAPって耳にすることがあるけど一体どんな肺炎だっけ?
そんなあなたにサクッとVAPの概要についてお伝えします。
VAPの定義

まずはVAPの定義です。
気管挿管下の人工呼吸患者で人工呼吸開始48時間以降に新たに発生した肺炎

人工呼吸開始前に発生した肺炎は除くんですね⁉
VAPの概要

ちなみにVAPってどんな肺炎?
文献によって数値は様々ですが
•ICU入室患者の3~4%に発生
•ICUにおける院内感染で最多(7~40%)
•人工呼吸患者VAP発症の危険性:1%/日ずつ上昇
•死亡率:20~55%
•人工呼吸器装着患者では特に死亡率高い
•在院日数:6日間延長
それぞれの文献に共通して言えることは

人工呼吸器装着患者ではVAPは極力起こしたくない!!
ということですね。
VAPの主な原因

VAPって何が原因で起こるの?
VAPの原因については主に2つあります。
原因①誤嚥

誤嚥は分泌物が気管チューブを伝って流入しカフを通過して気管内に流入することで起き、口腔鼻腔からのたれこみや胃からの逆流などがそれにあたります。
原因②細菌吸入

細菌吸入とは吸引操作により菌が気管内に侵入したり、汚染された呼吸器回路や加温加湿器から細菌が気管内に侵入することで起こります。
易感染状態がプラス
さらにこの二つの原因に易感染状態(例えば糖尿病や肝硬変・エイズなどの患者、ステロイド剤投与患者、鎮痛・鎮静薬・H2受容体拮抗薬投与患者などといった易感染状態)があるとVAPを引き起こしやすくなります。

①誤嚥②細菌吸入に易感染状態がプラスされて起こるということですね!
VAP予防策(VAPバンドル)

VAPで予防できる?予防策はあるの?

VAPの予防策は基本的には先ほどのVAPの原因・誘因となることを避ける、しかも予防策を単独ではなく複数をひとまとめにして、バンドリングして適応するVAPバンドルという考え方で予防します。

VAPバンドルはいくつかの機関や学会が提唱しているものがあり、上記は日本集中治療学会が提唱されているVAPバンドルになります。
1と2は細菌吸入を防ぐ、3は易感染状態を避ける、4と5は誤嚥を防ぐということです。

これらを一つだけ行うのではなく複数をひとまとめにして実施していくということですね。
VAPの診断と治療
VAPの診断

VAPの診断ですが確立された診断基準はなく、VAPの定義 (気管挿管下の人工呼吸患者で人工呼吸開始48時間以降に新たに発生した肺炎 )に①~⑤の症状・兆候から診断します。
VAPの治療

治療は上記の①~③の通りです。
①②は医師の仕事であり、医師以外は③の生体防御能改善に力を注ぐことになります。

生体防御機能改善ってどんなこと?

動画でも話していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓↓
まとめ
今回は人工呼吸器関連肺炎(VAP)についてでした。
✔ 定義:気管挿管下の人工呼吸患者で人工呼吸開始48時間以降に新たに発生した肺炎
✔ VAPはICU入室患者の3~4%に発生 、院内感染で最多、人工呼吸器装着患者では死亡率が高く、人工呼吸器装着患者では極力避けたい肺炎
✔原因:①誤嚥②細菌吸入+易感染状態
✔予防策:単独ではなく複数をひとまとめにして適応するVAPバンドル
✔診断:確立された診断基準なし
定義+①膿性喀痰②38度以上の発熱③白血球数増加④胸部X線:新しい浸潤影出現⑤呼吸音:湿性ラ音で判断
✔治療:①基礎疾患の治療②抗菌薬の投与③生体防御機能の改善
最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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