酸素療法の投与方法の理解やデバイスの使い分けはできていますか?

基礎知識

病院はもちろんですが、酸素療法を行っている方が施設や在宅でもいるかと思います。

セラピストが酸素療法を実際どのように行っていくのかを知らないと、その無知が場合によっては患者さんや利用者さんの状態を悪くすることがあります。

今回は酸素療法を実際にはどのように行っているかをみていきたいと思います。

酸素投与の方法やデバイスの使い分け、それぞれのデバイスの注意点や酸素加湿などについてお伝えします。

酸素療法の実際を学ぶ前に以下の記事を読まれていない方は理解を深めるために先に読むことをおすすめします!

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それでは見ていきましょう!

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酸素投与の方法

酸素投与の方法は大きく分けて、低流量システム、高流量システム、リザーバーシステムがあります。

低流量システムは必要とする吸気流量以下(1回換気量以下)の酸素ガスを供給し、不足分は室内空気で補う方法です。鼻カニュラ、簡易酸素マスクがあげられます。

高流量システムは患者が吸入するガスのすべてを酸素吸入器から供給する方法です。インスピロン、ベンチュリーマスクがあげられます。

ザーバーシステムはデバイスにリザーバーが付いており、低流量システムより高濃度の吸入気酸素濃度を投与することができます。リザーバー付酸素マスク、リザーバー付鼻カニュラなどがあげられます。

酸素流量と酸素濃度は必ずしも比例しない!

酸素流量と酸素濃度は必ずしも比例しません。

低流量システムでは、酸素流量は同じでも1回換気量や呼吸数、呼吸パターンによって吸入気酸素濃度は容易に変化します。

高流量システムでは総流量30L/min(健常成人の平均吸気速度)以上を確保できる最大の吸入酸素濃度は約50%まで(酸素流量15L/min)です(上の表参照)。

器具に記されているような高濃度の酸素吸入は成人では不可能であり、設定値通りの高濃度酸素吸入が可能なのは、小児や1回換気量が減少した患者になります。

低流量システムと高流量システムの特徴を踏まえると上の表の吸入酸素流量と吸入気酸素濃度の関係はあくまで目安であって個々の様々な因子によって変わることを頭に入れておいてくださいね。

↓動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)

酸素療法⑩低流量と高流量について誤解してませんか?

低流量システム

低流量システムの中でも鼻カニュラと簡易酸素マスクについて説明します。

鼻カニュラ

利点

器具が簡単で不快感を与えない

●食事や会話が自由にできる

欠点

呼吸状態により酸素濃度が変動する。

 例)口呼吸

●高濃度の酸素投与には適さない

具体的な投与法

100%酸素2L/分から開始

O2流量を1L/分上げるごとに吸入O2濃度は約4%上昇する

注意点

1.酸素流量と吸入酸素濃度の関係は患者の一回換気量により変化する

2.患者が低換気になると吸入酸素量の比率は増加し、吸入酸素濃度は上昇する

3.過換気になると吸入酸素濃度は低下する。

4.常時口呼吸している患者には適さない。

5.酸素流量が6L/minを超えると鼻カニュラの使用は勧められない。

簡易酸素マスク(単純マスク)

利点

鼻カニュラより安定したO2濃度が得られる

欠点

経口摂取、喀痰排泄、会話の妨げ=患者のストレス

具体的な投与法

100%酸素5〜8L/分で使用

吸入O2濃度は40〜60%得られる

注意点

1.マスク内の呼気ガスを再吸入しないように、酸素流量は通常5L/min以上にする

2.吸入酸素濃度は40%以上になるので、低濃度の酸素吸入には適さない

3.マスクで低流量(1L/minとか)で流しているのを見かけるが、呼気ガス中の二酸化炭素を再吸入し、PaCO2が上昇することがあるので注意が必要

↓動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)

酸素療法⑪低流量システムのデバイス(鼻カニュラ、酸素マスク)の利点・欠点・投与方法・注意点

高流量システム

高流量システムの中でもベンチュリマスクとエアロゾールマスクについて説明します。

ベンチュリマスク

利点

患者の1回換気量に左右されない。

●正確な酸素投与が可能。

●吸入気酸素濃度が24~50%の安定した酸素を吸入させることができる。

欠点

推奨酸素流量以下では設定酸素濃度を維持できない。

具体的な投与法

●設定酸素濃度ごとに推奨酸素流量が決められている。

注意点

1.吸入気の酸素濃度を調節するアダプターが数種類あり、投与したい濃度のアダプターを予め接続して用いる必要がある。

2.推奨酸素流量以下では設定酸素濃度を維持できないので推奨酸素流量内で設定する。

エアロゾールマスク(インスピロンネブライザー)

利点

O2濃度の設定が可能。

加湿可能

欠点

●単純マスクと同じ

●騒音や大量ガス、水蒸気の刺激で患者のストレスは増す。 

具体的な投与法

酸素5L/分以上で使用

注意点

1.インスピロンネブライザーで総流量30L/minを確保できる酸素濃度は60%

2.高濃度の酸素吸入は成人では不可能

3.設定濃度が刻印されたところ以外では使用しない

4.過加湿になりやすいので注意

↓動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)

酸素療法⑫高流量システムのデバイス(ベンチュリマスク、インスピロンネブライザー)の利点・欠点・投与方法・注意点

リザーバーシステム

リザーバーシステムの中でもリザーバー付酸素マスクとリザーバー付鼻カニュラ(オキシマイザー)について説明します。

リザーバー付酸素マスク

利点

●高濃度の酸素吸入が可能。

●通常、吸入気酸素濃度が60%以上に適す。

欠点

酸素流量が少ないと呼気ガスを再呼吸するため、PaCO2が上昇する可能性あり。

具体的な投与法

酸素流量は6L/分以上に設定。

*二酸化炭素の蓄積防止とリザーバーバッグ内に十分な酸素を貯めるため! 

注意点

酸素流量が少ないと呼気ガスを再呼吸することでPaCO2が上昇する可能性があり、酸素流量は6L/分以上となるよう設定する必要がある。

リザーバー付鼻カニュラ(オキシマイザー)

利点

高濃度酸素吸入法としてよりも酸素節約効果を期待。

欠点

加湿器との併用はできない。

*内臓のリザーバーは薄い膜でできており、それに水滴が付着するとリザーバーとして機能しなくなるため。

具体的な投与法

デバイスに添付されている説明書を元に酸素流量を設定する。

注意点

1.加湿はしない。

2.ペンダント内部のリザーバーが作動しているか必ず確認する。

3.説明書を元に酸素流量を設定する。

↓動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)

酸素療法⑬リザーバーシステムのデバイス:リザーバー付酸素マスクとオキシマイザーの利点・欠点・具体的投与方法・注意点

酸素加湿について

病院時代に病棟でたまに見かけたのですが、むやみやたらに加湿をかけていることがありました。

加湿について『酸素療法ガイドライン』では以下のように述べています。

鼻カニュラでは3L/分まで、ベンチュリマスクでは酸素流量に関係なく酸素濃度40%までは、あえて酸素を加湿する必要はない。

『酸素療法ガイドライン』より

理由は以下の通りです。

理由

1.ヒトは本来、天然の加湿器である鼻腔を介して呼吸している

2.1回換気量に占める配管からの酸素(乾燥酸素)の割合が少ない。

3.酸素を加湿しないことにより気道から失われる水分量はきわめてすくない

4.室温で使用する加湿器の加湿能力は低い。

5.酸素加湿の有無で自覚症状に差がないという報告がある。

6.加湿器蒸留水の細菌汚染が報告されている。

理由なき、むやみな加湿はやめましょうね。

↓動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)

気道クリアランス法⑧人工呼吸中や酸素療法中になぜ気道の加温加湿は必要か?
気道クリアランス法⑧鼻カニュラ3L/分、ベンチュリマスク40%以下で酸素加湿しなくてよい理由4つ

まとめ

今回は酸素療法の実際についてでした。

まとめ

酸素投与の方法は大きく分けて、低流量システム(鼻カニュラや簡易酸素マスクなど)、高流量システム(ベンチュリマスクやエアロゾールマスクなど)、リザーバーシステム(リザーバー付酸素マスクやリザーバー付鼻カニュラなど)がある。

酸素流量と酸素濃度は必ずしも比例しない。個々の様々な因子によって吸入酸素流量と吸入気酸素濃度の関係は変わる。

✔それぞれのデバイスの利点・欠点・具体的投与方法・注意点について押さえておく。

✔酸素加湿に関して『酸素療法ガイドライン』では、『鼻カニュラでは3L/分まで、ベンチュリマスクでは酸素流量に関係なく酸素濃度40%までは、あえて酸素を加湿する必要はない。』と述べられており、理由に関しても押さえておく。

以上、酸素療法の実際についてでした。

酸素療法の実際についてすぐに使える視点・注意点!

☑各デバイスの酸素流量と吸入気酸素濃度の関係の表の値は目安であり、個々の1回換気量や呼吸数、呼吸パターン、年齢などを評価してデバイスの選定や変更を考慮する必要がある。

☑デバイスの選定や変更には各デバイスの利点・欠点・注意点などを踏まえて行う。

☑酸素加湿が必要か否かは『酸素療法ガイドライン』を参考に判断する。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ご質問やご意見などありましたら、お問い合わせから宜しくお願い致します(^^)

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