呼吸リハのすすめのりかです。
今回は社会的・心理的評価についてです。
呼吸器疾患の方は呼吸困難感や呼吸器症状によってADLやQOLが障害されたり、認知機能の低下や抑うつ的になることがあります。
ただ、呼吸器疾患の方は中枢疾患の方などでよく使われている評価法(FIMやBarthal Indexなど)ではご本人が一番苦しんでいる呼吸困難感など呼吸器症状の問題がなかなか点数に表れにくいこともあり、呼吸器疾患特有の評価法なども考案されてきました。
ここでは呼吸器疾患の方に使える社会的・心理的評価について説明していきたいと思います。
では、見ていきましょう!
社会面の評価

まず社会面の評価について述べていきます。
最初に問診で聴いていく内容、次に呼吸器疾患に特化した評価法・質問表の紹介です。
家族構成
一人暮らしかどうか、患者をサポートする家族がいるかどうかは呼吸器疾患の治療やリハビリをしていくうえで重要になってきます。必ず聴きとりましょう。
また、患者自身が介護に携わっていないかどうかも確認する必要があります。
可能であればどのような動作で息切れを感じやすいか(おむつ替えで中腰になる時など)も一緒に聴いておきましょう。
家屋構造
マンションか(何階建ての何階に住んでいるのか?エレベーターはあるのか?など)、一戸建てか(平屋?2階建て?など)、居室はどこか(1階?トイレは近いか?HOT使用しているならHOT機器はどこか?など)を聴いておきましょう。
また家屋の立地条件はどうか(家の周りは坂道が多いところか?など)も確認しましょう。
職業歴
就業されている場合は今の職業(可能ならば過去の職業)も聴いておきましょう。
デスクワークか?外回りが多いのか?あるいは肉体労働なのか?はもちろん、家から職場までの通勤経路の確認や移動手段や職場の立地条件なども聴いておきましょう。
運動習慣の有無
どれくらいの頻度でどのような運動をどれくらいの時間行っているか聴きます。
以前はできていたのに息切れのためにできなくなった運動やスポーツはないかも聴いておきましょう。
ADL評価
どのような身の回り動作が可能なのか?また必要とされているのか?を聴き取ります。その中で、できない動作も工夫をすればできる可能性はあるのか?も探れるとなお良いですね。
千住らの ADL 評価を始め、様々な評価法が提案されているのでこういった評価法参考に聴き取りましょう。

QOL評価
慢性呼吸不全患者は呼吸困難のため、健康関連 QOL が障害されるのでQOLの評価は重症度やリハビリテーションの効果判定において重要です。
和訳された疾患別特異的評価法には以下のものがあります。
CRQ(Chronic respiratory disease questionnaire;慢性呼吸器疾患質問表)
20項目からなる自己申告質問票で、呼吸困難、疲労、情緒的機能、呼吸法の制御という四つの側面を測定する。
SGRQ(St.George’s respiratory questionnaire)
76項目からなる質問表に自己記入する。症状、活動性、疾患の影響という三つの側面を測定する。
また、CAT(COPD assessment test)という評価法もあります。
●CATは従来の質問票に比較して簡便で安価。
●SGRQとも相関関係あり。
●COPD患者のQOLを適切に把握できる。
●臨床では良く用いられている。
①咳、②喀痰、③息苦しさ、④労作時息切れ、⑤日常生活、⑥外出への自信、⑦睡眠、⑧活力の8項目で患者のQOLを総合的に半定量できる。
心理的側面の評価

次に心理的評価です。
認知機能
高齢者では加齢に伴い認知機能の低下が認められ呼吸リハビリテーションの妨げになることが多くあります。
あらかじめ長谷川式簡易知能スケール(HDS-R)やMMSEによる認知機能の把握が必要になってきます。
また、近年の研究ではCOPD患者の前頭葉機能の低下が指摘されており、前頭葉機能の検査法として前頭葉機能検査(FAB)があります。
COPD患者では特に類似性,語の流暢性,抑制が低下していると言われています。
抑うつ
進行した呼吸器疾患では抑うつ症状合併することが多く呼吸リハの阻害因子になり得ます。
抑うつに関してはHADSが用いられることがあります。
HADS(hospital anxiety and depression scale)
●英国で開発された、自己にて記入する一般外来患者用不安抑うつテスト。
●身体症状をもつ患者の不安と抑うつ状態を評価するために開発。
●臨床経験から基づく内容から構成。
●14項目で要する時間は約5分と簡便で短い時間で記入できる。
●時間の制約がある外来診療や健診でも利用できる。
今まで呼吸器疾患に対して使える社会的・心理的評価について述べてきました。
挙げてきた評価表は現時点での状態を点数という形で客観的に示してくれますし、経時的変化を追っていくには良いとは思います。
ただ評価表には表れてこない、普段の臨床でのやり取りの中で得られる情報もありますよね。
身体的な面だけでなく、1回1回接する時に社会的・心理的側面も意識するようにして頂けたらなと思います。
まとめ
今回は社会的・心理的評価についてでした。
✔社会面の評価としては、家族構成、家屋構造、職業歴、運動習慣の有無、ADL評価(千住らのADL評価表)、QOL評価(CRQ、SGRQ、CAT)などがある。
✔心理面の評価としては、認知機能(HDS-R、MMSE、FABなど)、抑うつ(HADS)などがある。
以上、社会的・心理的評価でした。
☑各種評価表は客観的な情報を得たり経時的変化を追うのには便利だが、評価表から得られない情報もあり、1回1回の臨床で意識して拾っていく必要がある。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ご質問やご意見などありましたら、お問い合わせから宜しくお願い致します(^^)
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