Ⅰ型呼吸不全とⅡ型呼吸不全の違いや低酸素血症の原因について説明できますか?

基礎知識

今回は呼吸不全と低酸素血症の原因についてです。

呼吸リハをしていると

「この方はⅠ型呼吸不全なので気を遣わず酸素あげてもいいよ。」

「この方はⅡ型呼吸不全なので酸素をあげるときは慎重に。」

など言われることがあります。

そもそもⅠ型呼吸不全・Ⅱ型呼吸不全とは何なのでしょうか?

またその原因は何があげられるのでしょうか?

それでは見ていきましょう!

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呼吸不全の定義

そもそも呼吸不全とは何なんでしょうか?

厚生省特定疾患呼吸不全調査研究班によると呼吸不全の診断基準と分類は表のとおりになります。

定義

●室内気吸入時のPaO2≦60torr➡呼吸不全

●PaCO2≦45torr➡Ⅰ型呼吸不全

●PaCO2>45torr➡Ⅱ型呼吸不全(CO2が貯まるタイプ!)

●慢性呼吸不全➡呼吸不全の状態が少なくとも一ヶ月持続するもの

Ⅰ型かⅡ型かはCO2が貯まるのかどうかによって分けられています。

呼吸不全の分類

呼吸不全には換気障害ガス交換障害とに分けられます。

簡単に言うと、換気障害は換気(空気の入れ替え)の障害ガス交換障害は肺胞と肺毛細血管とのガス交換の障害になります。

換気障害では空気の入れ替えが障害されることでCO2が貯まりやすくなります。

呼吸不全の原因には、肺胞低換気、シャント、換気・血流比不均等、拡散障害の4つがあげられます。

換気障害とガス交換障害

●換気障害(肺胞低換気)➡Ⅱ型呼吸不全

●ガス交換障害(シャント、換気血流比不均等、拡散障害)➡Ⅰ型呼吸不全

臨床的に4つのうち1つだけが問題となることは少なく、それぞれの要因が絡み合っていることが多いです。

動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓

酸素療法①わかりやすい‼Ⅰ型・Ⅱ型呼吸不全の違い

肺胞低換気

肺胞低換気のイメージを付けておきましょう。

肺胞低換気とは肺胞への空気の出入りが悪くなっている状態のことを言います。

正常であれば酸素を取り込み、二酸化炭素を排出します。

低換気では酸素を取り込みにくく、二酸化炭素を排出しにくくなります。

肺胞気の酸素分圧が下がることで動脈血へ取り込まれる酸素が少なくなり、動脈血酸素分圧が低下します。

また肺胞気の二酸化炭素分圧が上がることで動脈血中の二酸化炭素は肺胞へ排出されず、動脈血二酸化炭素分圧が上昇します。

以上のことから、低酸素血症が起き高炭酸ガス血症になるということですね。

先ほどのイメージを踏まえてより生理学的に説明します。

①まず二酸化炭素は酸素よりも肺胞と肺毛細血管拡散能が20倍大きくといわれており、肺胞気二酸化炭素分圧と動脈血二酸化炭素分圧はほとんど同じであると考えられます。

②肺胞気式は

PAO2=PIO2-PaCO2/R(呼吸商)

で示されますが、室内気なのでPIO2=150、PaCO2=PACO2、呼吸商を0.8とすると

PAO2=150-PACO2/0.8

となります。

この式からPACO2が大きくなればなるほど、PAO2は小さくなります。

PAO2が小さくなればなるほどPaO2は小さくなります。

よって、低換気によりPACO2が上昇すればするほどPaCO2も上昇し、PAO2が低下、その結果PaO2が低下して低酸素血症になるということですね。

また今度は肺胞気式からではなく、肺胞換気量とPAO2、PaO2、PaCO2の関係からみていきます。

肺胞換気量(VA)は、肺胞レベルで実際に肺胞毛細管血流との間でガス交換を行う換気量です。

VAが減少すればPAO2が減少しPaO2が低下し、低酸素血症となります。

またPaCO2とVAの関係はPaCO2×VA≒一定で表されます。

PaCO2とVAは反比例の関係にあり、VAが減少すればするほどPaCO2は増加し、高炭酸ガス血症となります。

肺胞低換気の場合、換気量を上げることで低酸素状態は改善します。

臨床でのちょっとしたコツ👆

呼吸が浅い、胸部の前後径が大きいなどの時は肺胞低換気を疑います。

低換気による高炭酸ガス血症では下記のような症状がみられます。

また、呼吸介助や人工換気により換気量をあげることで低酸素血症が改善する場合は肺胞低換気であると判断します。

動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓

酸素療法②肺胞低換気についてわかりやすく解説‼

シャントとは

混合した静脈血の酸素含量によって動脈血のPaO2は著明に低下します。

シャントとは、肺まで達した混合静脈血がガス交換されないまま、肺静脈血系を経て動脈血側に混合する現象です。

臨床でのちょっとしたコツ👆

シャントの場合、基本的には100%酸素の吸入を行ってもPaO2は上昇しません。

ただし、無気肺による肺内シャントの場合は、肺の再拡張の結果改善が見られることがあります。

動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓

酸素療法③シャントについてイメージしやすく解説‼

換気血流比不均等とは

換気血流比不均等とは、肺胞の各領域で肺胞換気量と肺毛細管血流のバランスが悪い状態のことです。

上の図で言うと、左の図は換気も血流も均等です。

しかし、右の図では換気が多い肺胞には血流が乏しく、換気が少ない肺胞に血流が多いため、換気と血流の間に不均等が生じています。

そのため、酸素化が効率よく行われず低酸素血症となります。

臨床でのちょっとしたコツ👆

換気血流比不均等では、体位あるいは呼吸パターンによって酸素化に影響を受けます。

例えば、両下肺野の換気が悪い場合に背臥位で寝ると、換気が悪い両下肺野に重力の影響で血流が多く流れると換気と血流に不均等が生じ酸素化が不良になります。

腹臥位にすると換気が保たれているところに血流が流れるため酸素化が改善します。

動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓

酸素療法④換気血流比不均等についてシンプルに解説‼

拡散障害とは

拡散障害では、肺胞気と赤血球の拡散距離が増大し、酸素化に時間を要します。

正常安静時では肺毛細管を通過する時間は0.75秒であり、1/3の時間である0.25秒で拡散は完了します。

拡散障害では間質病変などが拡散を邪魔し、拡散に要する時間が増大します。

激しい運動時では、正常であれば0.75秒の2/3の時間で拡散を完了します。

しかし、拡散障害では拡散に要する時間が増大することに加え、運動時では肺毛細血管の血液通過時間が短くなり、拡散が完了できずPaO2が急激に低下します。

臨床でのちょっとしたコツ👆

拡散障害では、100%酸素投与で低酸素血症が改善します。

また、拡散障害では安静時に比べ動作時に急激に低酸素状態になるのが特徴で、低酸素の割に呼吸困難感を訴えないことが多いです。

また、脈拍が上昇しにくい位のゆっくりとした動作では血中酸素の低下は軽減し、酸素投与により改善するのも特徴です。

動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓

酸素療法⑤拡散障害~安静時より労作時の方が低酸素血症が著しいのはなぜ?~

低酸素症の診断

低酸素血症の診断は上の表のとおりで診断できますが、厳密に診断しないことが多いです。

それはある患者さんの低酸素血症の原因が一つだとは限らず、それぞれの要因が絡み合っていることが多いからです。

肺胞低換気、シャント、換気・血流比不均等、拡散障害の『臨床でのちょっとしたコツ👆』で書いた内容を踏まえるとリハビリ中の臨床像から低酸素血症の要因を推察することができます。

低酸素症の臨床症状

低酸素血症の臨床症状も押さえておきましょう。

まとめ

今回は呼吸不全と低酸素血症の原因についてでした。

まとめ

✔呼吸不全の定義:室内気吸入時のPaO2≦60torr。

✔Ⅰ型呼吸不全:PaCO2≦45torr、ガス交換障害(シャント、換気血流比不均等、拡散障害)

✔Ⅱ型呼吸不全:PaCO2>45torr、換気障害(肺胞低換気)

✔慢性呼吸不全:呼吸不全の状態が少なくとも一ヶ月持続するもの。

✔肺胞低換気:肺胞換気量が低下し、肺胞気酸素分圧が低下することで低酸素血症になること。PaCO2の増加を引き起こす。

✔シャント:肺まで達した混合静脈血がガス交換されないまま、肺静脈系を経て、動脈血側に混合する現象。

✔換気血流比不均等:肺胞各領域で肺胞換気量と肺毛細管血流のバランスが悪い状態のこと。

✔拡散障害:肺胞気と赤血球の拡散距離が増大し、酸化に時間を要し低酸素血症となること。

以上、呼吸不全と低酸素血症の原因でした。

Ⅰ型呼吸不全・Ⅱ型呼吸不全についてすぐに使える視点・注意点!

☑Ⅱ型呼吸不全の場合は、低酸素血症だけでなく高炭酸ガス血症にも注意を払う

☑肺胞低換気の臨床像:呼吸が浅いなど。換気量をあげると酸素化改善。

☑シャントの臨床像:基本的には100%酸素吸入でもPaO2は上昇しないが、無気肺による肺内シャントの場合は、肺の再拡張の結果改善が見られることがある。

☑換気血流比不均等の臨床像:体位や呼吸パターンが酸素化に影響を与える。

☑拡散障害の臨床像:100%酸素投与で低酸素血症が改善。安静時に比べ動作時に急激に低酸素状態になり、低酸素の割に呼吸困難感を訴えないことが多い。

☑低酸素血症の臨床症状を押さえておく。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ご質問やご意見などありましたら、お問い合わせから宜しくお願い致します(^^)

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