今回は運動時の酸素吸入についてです。
呼吸器疾患の方で安静時には酸素吸入が必要がなくても運動時は酸素吸入が必要な方がいます。
当たり前のように酸素吸入をしながら動いていると思いますが、運動時の酸素吸入の必要性を改めて考えたことがありますか?
一般的に呼吸器疾患患者の運動時の酸素吸入の効果はどういったものがあるのでしょうか?
またCOPD患者が運動時に酸素吸入を行うとどのような効果があるのでしょうか?
酸素吸入中の患者の運動時の注意点にはどのようなものがあるのでしょうか?
酸素療法についてあまりよくわからないという方は、今回の記事を読む前に酸素療法の適応や酸素療法の投与の実際について関連記事を見てくださいね。
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それでは見てみましょう!
運動時の酸素吸入

呼吸器疾患患者では極軽度の運動でもPaO2が低下することが多く、運動時の酸素吸入は以下のような効果があり、運動耐容能を向上させる。
●PaO2低下の軽減⇒酸素運搬の増加⇒運動持続時間の延長。
●下肢筋への酸素供給の増加⇒下肢筋の酸素消費量の増加。
●呼吸困難の軽減。
このような効果はすべての患者にみられるものではなく、酸素吸入による骨格筋への酸素供給の増加には限界があります。
運動中に生じる低酸素血症の程度に関係なく酸素吸入により呼吸困難を改善することが多いですが、全ての患者において呼吸困難改善が見られるわけではありません。
酸素吸入による呼吸困難軽減の機序の一つとして酸素吸入による換気ドライブの抑制が挙げられますが詳細は明らかにされていません。
呼吸調節中枢で換気は調節されています。
通常は酸素が低い時や二酸化炭素が貯留しているときに換気ドライブは亢進されますが、慢性的にCO2が貯留している状態では二酸化炭素の貯留には反応せず、酸素の低下に反応して亢進されます。
酸素低下に対する換気ドライブの亢進が呼吸困難感の機序の一つとも言われており、こういった患者に対して酸素を投与することで換気ドライブを抑制し呼吸困難感を軽減するのではと言われています。
呼吸困難感の発生機序に関しては、以下の関連記事も参考にしてくださいね。
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COPD患者の酸素吸入下での運動

●筋組織への酸素運搬増加、酸素の取り込み亢進
⇒乳酸上昇、pH の低下が抑制。
●運動に伴う換気量増加抑制、換気亢進に伴うエアートラッピング改善、換気増大に伴う肺の動的過膨張軽減、分時換気量や呼吸数増加の抑制
⇒横隔膜の仕事量減少、呼吸筋疲労遅延、換気増加に伴う呼吸補助筋の負担軽減。
●低酸素血症を改善⇒心拍数の増加を抑制。
●PAO2上昇、低酸素性血管攣縮抑制、肺動脈圧低下⇒右心負荷軽減。
このような酸素吸入の肺循環系に対する影響は急性効果だけでなく慢性効果も認められます。
以上の事を踏まえると、運動時に低酸素血症が出現する患者に対しては 吸入を行うべきです。
酸素吸入療法中の患者に対しても呼吸リハビリテーションとしての運動療法は積極的に行うべきです。
酸素吸入中の患者の運動療法上の注意点

酸素吸入中の患者に運動療法を実施する際には上記の点に注意します。
(注意点が頭に入りにくい(´;ω;`)という方は上記の表を印刷したり、どこかにメモしたりして運動療法を実施してくださいね。)
運動療法中に酸素吸入させるとより強い負荷の運動をさせることができます。
その結果、呼吸リハビリテーションの効果がさらに向上する可能性があります。
しかし、労作時の呼吸困難は軽減されるが酸素吸入以上の運動耐容能の改善はなかったという報告もあり、その長期効果は明らかにされていません。
動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね!↓
まとめ
今回は運動時の酸素吸入についてでした。
✔呼吸器疾患患者では極軽度の運動でもPaO2が低下することが多く、運動時の酸素吸入は酸素運搬能や下肢筋の酸素供給、呼吸困難などに効果があり、運動耐容能を向上させる。
✔COPD患者に対する酸素吸入下での運動の効果は、筋組織への酸素運搬能力向上、換気亢進の抑制による横隔膜・呼吸筋・呼吸補助筋の負担軽減、酸素化改善による心負担軽減などがある。
✔酸素吸入の肺循環系に対する影響は急性効果だけでなく慢性効果も認められる。
✔運動中に酸素吸入させるとより強い負荷の運動をさせることができるため、呼吸リハビリテーションの効果がさらに向上する可能性があるが、労作時の呼吸困難は軽減されるが酸素吸入以上の運動耐容能の改善はなかったという報告もあり、長期効果は明らかにされていない。
以上、運動時の酸素吸入についてでした。
☑運動時に低酸素血症が出現する患者に対しては 酸素吸入を行う。
☑酸素吸入療法中の患者に対しても呼吸リハビリテーションとしての運動療法は積極的に行う。
☑酸素吸入下で運動療法を行う際は、酸素吸入中の運動療法上の注意点に従って運動療法を実施する。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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