呼吸リハのすすめのりかです。
今回は肺音の聴診(実技編)についてです。
前回、肺音の聴診(知識編)で肺音の基礎知識をお伝えしました。
まだ読まれていない方は先にこちらの記事を参照してくださいね。
【関連記事】
肺音の聴診(実践編)では実際に聴診する際の注意点やコツなど臨床ですぐに使える内容をお伝えします。
それでは見ていきましょう!
聴診器について
肺音の聴診では聴診器を用います。まず聴診器について見ていきましょう。
聴診器の各部位の名称
聴診器の各部位の名称です。

聴診器の種類と特徴
聴診器にはベル型と膜型があります。

●ベル型:低音の聴診に向く。
●膜型:高音の聴診に向く。
肺音の聴診は周波数特性や扱いやすさから膜型が用いられている。
聴診器の導管の長さ
市販の聴診器は一般的に導管が長めに作られています。
導管が長いと音が減衰しやすく、音が聞こえにくくなる可能性があります。
また、導管が患者やセラピストの身体、衣服に触れて雑音を伴うことがあります。
音質だけを考慮するならear pieceを耳にかけた状態でchest pieceがへその位置にくるのが良いとされています。
ただし、ICUなどのベッドサイドのような狭く点滴やモニターなどが多く設置されているような場合は患者に接近しにくいため、導管が短すぎると左右の胸壁を聴き比べにくくなります。
場面や用途を考慮して調整するとよいですね。
動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓
聴診器の使い方
ear pieceの向き

外耳道は側頭骨に対しほぼ直角に位置するが、外耳孔は後外方に向いて開いています。
聴診器のear pieceの向きは、ear pieceの末端が前内方に向くようにかけます。
chest pieceの持ち方

3つの方法があります。
①導管の先端をつまみ、示指でchest pieceを押し当てる方法。
頸部や肺尖部など比較的狭い部分に当てるのに向いています。
②手掌で押さえる方法。
胸壁のような広い場所に当てやすく、しっかりとchest pieceを押さえるのに向いています。
③示指と中指で挟む。
呼吸介助で換気を促しながら聴診する場合に向いています。
*セラピストの手掌の大きさや指の長さ、chest pieceの形状や大きさにも左右されるため、各個人や状況にあった持ち方をしてくださいね。
chest pieceの当て方
聴診器の膜部分を胸壁にしっかり密着させ、chest pieceを離した後に薄く跡が残る程度に押さえます。
●患者が肥満の場合:脂肪で肺音が減弱しやすいためしっかりと押さえます。
●患者がやせて肋骨が浮き出ている場合:ベル型を使用するとよいと言われているが、膜型でも皮膚との間にタオルなどを挟むと聞きとりやすくなります。
膜が密着せず、胸壁から剥がれるとラ音と紛らわしい音が発生するため、聴診中はchest pieceを一定の圧で胸壁に密着させておくことが重要です。
動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓
聴診の方法
患者の姿勢
基本:両手を腰に当て、軽く背筋を伸ばした椅坐位。背部の聴診を行う際は脊柱を軽度屈曲位にして行います。
座位が無理な場合:臥位のまま聴診。可能ならば、背臥位だけでなく側臥位で背部の聴診も行います。
どうしても側臥位で測定できない場合:聴診部位のマットレスを押し下げ、聴診器を奥に入れて行います。
聴診部位

頸部:正常では気管呼吸音が聴こえます。胸壁上のどこかで聴こえる連続性ラ音は頸部気管上で聴こえることがあります。
頸部の聴診から、換気の状態、気道の閉塞状態などの肺全体の状態を知ることができます。
胸部:肺尖部(右>左)、胸骨周囲、肩甲骨間部からは正常では気管支肺胞呼吸音が聴こえます。それ以外の大部分の胸壁からは、正常では肺胞呼吸音が聴こえます。
聴取している箇所で聴こえるべき呼吸音と違う音が聴取される場合は異常です。
聴診順序

基本:セラピストは患者さんの側方に位置し、胸部上方から下方に向かって、左右対称に聴診していく。
左右の前胸壁の上・中・下肺野、左右の側胸部、左右の背部の上・中・下肺野の14カ所を聴診します。
スクリーニングでは左右の前胸壁の上・下肺野、左右の側胸部、左右の背部の上・下肺野の10カ所を聴取できればOK。
聴診器を一部位に当てる時間
吸気相と呼気相の特徴をしっかり捉え正確に判別するために、吸気の始めから呼気の終わりまで、最低1サイクルは同一部位を聴く必要があります。
聴診時の呼吸法
基本:安静換気から開始し、次にゆっくりとした深呼吸をさせます。
呼吸が浅い、弱くて十分に聴取できない場合は呼吸介助手技も併用→肺胞音や副雑音の聴取が可能になるだけでなく、介助そのものが換気に有効かどうか判定できますよ。
動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓
聴診の練習方法
ひたすら聴きまくることですね。
肺音の分類を頭に入れたうえで、chest pieceを何も考えなくても胸壁に密着させることができたり、スムーズに聴診器を動かして順序立てて聴くことができたり、聴取した肺音を判別し記録することができるのを目指してみましょう。
動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓
まとめ
今回は肺音の聴診(実践編)についてでした。
✔聴診器の名称、聴診器の種類(ベル型や膜型)や特徴(肺音聴診は膜型が用いることが多いなど)、聴診器の使い方(ear pieceの向き、chest pieceの持ち方・当て方)、聴診の仕方(患者の姿勢、聴取部位、聴取順序など)、聴診の練習方法など具体的に肺音を聴診する方法について知った。
以上、肺音の聴診(実践編)についてでした。
☑肺音を聴診する際は基本を押さえたうえで、患者さんやセラピストの身体状況に合わせて肺音を正確に聴取できるように工夫する必要がある。
☑今まさに聴取している箇所の正常呼吸音をしっかり頭に入れておくことで異常に気付くことができる。
☑肺音の聴診技術を磨くには基本を押さえたうえでひたすら聴きまくることである。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ご質問やご意見などありましたら、お問い合わせから宜しくお願い致します(^^)
コメント