肺音の聴診(知識編)

基礎知識

呼吸リハのすすめのりかです。

今回は音の聴診についてです。

呼吸リハに携わっているセラピストは普段からよく肺音の聴診はされていてなじみが深いかと思います。

普段は担当している疾患の影響であまり肺音の聴診はされていないという方でも肺音の聴診から得られる情報で大事なものもありますので、基礎的なところは押さえておくと武器が一つ増えるかと思います。

今回は肺音の聴診について基礎的なところから説明していきたいと思います。

それでは見ていきましょう!

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聴診の意義

画像診断や生化学的検査が発達している現代で聴診を行う意義について考えてみました。

聴診の意義

●大がかりな装置や設備を必要としない。

●被験者の負担が比較的小さく評価できる。

●画像診断、生化学的検査よりも迅速に必要な情報が得ることができる。

理学療法士は医師のように画像診断や生化学的検査のオーダーはできませんが、自分自身の五感を使って目の前の患者さんや利用者さんのリアルタイムの状況を評価することはできます。

そのうちの武器の一つに肺音の聴診の技術はなり得ると私は臨床経験を経て感じています。

動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓

肺音聴診(知識編)①聴診の意義

呼吸音の発生機序

上の図の通り、呼吸している時に中枢の気管では気流が渦を巻いています(乱流)。

反対に末梢では渦は巻かずにすっと気流が流れています(層流)。

乱流と層流がありますが聴診器で聴いている肺音は第7~9分岐までの乱流を聴いていると言われています。

中枢の気管では肺組織があまりないために第7~9分岐までの乱流を聴診器が拾い、気管呼吸音として聴こえています。

末梢の気管では肺組織による高音成分が吸収された音を聴診器が拾っており、肺胞呼吸音として聴こえています(ちなみに、肺組織は低音は通しますが高音は吸収しやすいと言われています)。

つまり、聴診では対象としている領域で本来聴診されるべき音と実際聴診器から聴こえる音の違いから、気管や肺の状態、肺組織の変化を推察することができると言えます。

動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓

肺音聴診(知識編)②呼吸音の発生機序

肺音の分類

肺音は以下のように分類されます。

肺音は、呼吸音副雑音に大きく分けることができます。

呼吸音にも正常と異常があり、正常には気管呼吸音、肺胞呼吸音、気管支肺胞呼吸音があり、異常には呼吸音の減弱・消失、呼気延長、増強・気管支呼吸音化があります。

副雑音には、ラ音である水泡音、捻髪音、笛様音、いびき音があり、その他として胸膜摩擦音があります。

実際の肺音はナースが使用しているCD付き聴診トレーニングの本などを聴いてみるとよいと思います。(実際に私も最初はCDを聴きながら学んでいました。)

各肺音の特徴

各肺音の特徴を簡単に述べていきます。

CD付き聴診トレーニングの本などにも特徴はのっていることが多いのであわせて学んでいただけたらと思います。

まずは正常な呼吸音を知り、そのあとに呼吸音の異常や副雑音についてどのように異常なのか?副雑音が聞こえる機序を頭に入れながら学ぶと頭に入りやすいと思います。

肺胞呼吸音

肺の末梢の太い気道から離れたところで聴かれる。

「フー」という低い音で主に吸気に聴かれ、呼気はその出始めにわずかに聴こえる。

臨床的に肺胞呼吸音は肺胞換気の指標になる。

気管支呼吸音

太い気道の近くで聴かれる。

「ハー」という高い音で吸気に比べて呼気により大きく聴かれる。

吸気と呼気の間に明らかな音の切れ目がある。

気管呼吸音

頸部気管上で聴かれる。

粗い感じの音で吸気よりも呼気の音が大きく、吸気と呼気の間に明らかな音の切れ目がある。

気管支肺胞呼吸音

肺胞呼吸音と気管支呼吸音の中間と言われるが定義はややあいまい。

呼気と吸気で呼吸音がほぼ同じ大きさか、吸気で少し大きく聴こえ、吸気、呼気ともに肺胞呼吸音より大きく明瞭であるが、吸気と呼気の切れ目はない。

肺尖部(右>左)・胸骨周囲・肩甲骨間部からは正常呼吸音として気管支肺胞呼吸音が聴取されるが、それ以外の部位で聴こえた場合は異常である。

ここまでが正常の呼吸音になります。

以下、異常な肺音とラ音について述べていきます。

動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓

肺音聴診(知識編)④正常な呼吸音

呼吸音の減弱・消失

肺気腫:肺の過膨張がすすむと音を伝播すべき肺組織が疎となり音が胸壁に伝わりにくくなる。そのため両側性に呼吸音の減弱が見られる。

胸水など:胸腔内に胸水が貯留した場合も音の伝播が低下し、胸水が貯留している側に片側性に呼吸音が減弱する。

呼気延長

喘息・気管支炎・肺水腫など:末梢気道の狭窄で喘鳴を伴う呼気時間の延長が見られる。

参照)上気道の狭窄の場合:吸気時間の延長に喘鳴が伴う。

増強・気管支呼吸音化

肺組織の炎症(肺炎)・結核性病変:肺が硬化することで音の伝播が強まり、第7~9分岐までの太い気管支レベルでの遅い気流(乱流)の雑音が肺胞領域にあたる胸壁からも聴取されやすくなる。音質的には粗く鋭利な音となる。

臨床でのちょっとしたコツ👆

気管支呼吸音化の場合、音の大きさが大きいため肺音聴取OKで異常なしとしやすいが、実は肺炎だったということはよくあります。

肺音の大きさだけでなく、この音質の肺音はこの範囲で聴取しても異常ではないか?と意識しながら聴診をしてくださいね。

そのためには正常な肺音が聴こえ得る場所も知っておく必要があります。

動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓

肺音聴診(知識編)⑤呼吸音の異常

水泡音(低音性断続性ラ音):coarse crakles

ブツブツと粗い感じのする、音の大きな周波数の低い断続性ラ音。

痰・病変部の肺野、肺炎、肺水腫などで聴かれる。

持続時間は10msec。

吸気、呼気ともに聴かれる。

気管支壁に張った液体膜が呼吸運動により破裂することで発生すると考えられている。

捻髪音(高音性断続性ラ音)、ベルクロラ音:fine crakles

細かい、音の小さい、周波数の高い断続性ラ音。

痰のない間質性肺炎でよく聞かれる。

持続期間は約5msec。

下肺野に限局し吸気終末に多数のラ音が出現する。

長期臥床患者の肺底部にも聴こえるが、体位に影響され腹臥位では聞こえにくい。

咳をしても消失しない。

呼気時に閉塞した細い気道が吸気により再開開放することで発生すると考えられている。

笛様音(高音性連続性ラ音):wheeze

400Hz以上の高い音。

高音性の連続音で、発生部位は細い気管支。

気管支喘息で聴取されやすい。

基本的には呼気時に聴取されるが、吸気時に聴取されるwheeze(喘鳴)は重篤な気道攣縮の徴候であり、同時に気管内の器質的病変(分泌物貯留、浮腫、狭窄、異物、腫瘍など)の存在をの鑑別する必要がある。

いびき様音(低音性連続性ラ音):rhonchi,rhonchus

250msec以上持続する200Hz以下の低調な音。

低音性の連続音で、発生部位は比較的太い気管支。

気道異物、痰、肺癌などによる比較的中枢の気道閉塞で起こる。

呼気と吸気のどちらか、または両方に聴かれる。

胸膜摩擦音

呼気・吸気ともに出現する断続的な異常音である。

乾性胸膜炎や湿性胸膜炎の初期及び吸収期に聴取。

捻髪音とほとんど区別できない症例も多い。

断続性ラ音よりも耳に響くゴソゴソという粗い音で音の間隔が不規則。

ある一定の胸水が貯留している場合に、壁側胸膜と臓側胸膜とが擦れ合うことによって生じると考えられている。

動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)↓

肺音聴診(知識編)⑥副雑音

まとめ

今回は肺音の聴診(知識編)でした。

まとめ

✔肺音の聴診の意義は、大がかりな装置や設備を必要とせず、被験者の負担が比較的小さく評価でき、画像診断、生化学的検査よりも迅速に必要な情報が得ることができる点である。

✔呼吸音の発生機序は、中枢気道で乱流が起こっておりその音を中枢気道ではそのままの音を、末梢気道では第7~9分岐までの乱流の音のうち高音成分が肺組織に吸収された後の音を聴診器で聴いている。

✔肺音の分類では、呼吸音と副雑音に大きく分けることができる。

呼吸音にも正常と異常があり、正常には気管呼吸音、肺胞呼吸音、気管支肺胞呼吸音があり、異常には呼吸音の減弱・消失、呼気延長、増強・気管支呼吸音化がある。

副雑音には、ラ音として水泡音、捻髪音、笛様音、いびき音があり、その他として胸膜摩擦音がある。

以上、肺音の聴診(知識編)についてでした。

肺音の聴診にすぐに使える視点・注意点!

☑肺音の聴診をマスターすることで、聴診器1つで患者さんや利用者さんに大きな負担をかけることなく、リアルタイムの肺の状態を知ることができるのでセラピストにとって一つの武器になり得る。

☑呼吸音の発生機序を知ることで呼吸音の正常・異常の違いやラ音がなぜ起こっているかの理解を助け、臨床では実際に聴取した肺音の解釈にも役立つ。

☑各肺音について音の質や音の発生の機序、聴取される可能性のある疾患を知ることで臨床で聴き分けることが可能になる。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ご質問やご意見などありましたら、お問い合わせから宜しくお願い致します(^^)

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