今回は酸素療法の合併症について述べていきます。
呼吸リハをされているセラピストの方は知っておられるかと思いますが、酸素療法をしていると合併症を起こすことがあります。
合併症にはどのようなものがあるのか?
原因や主症状、予防する点などはどういったものがあるのか?
今回は上記のような観点から酸素療法の合併症について説明していきたいと思います。
今回、酸素療法の合併症の説明の前に理解を深めるために以下の関連記事を読んだことがない方は先に読むことをおすすめします。
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それでは見ていきましょう!
CO2ナルコーシス

●原因:肺胞低換気
●主症状:意識障害・呼吸性アシドーシス・自発呼吸の減弱(3大症状)
酸素療法の合併症の1つ目に肺胞低換気が原因で意識障害、呼吸性アシドーシス、自発呼吸の減弱といった症状がみられるCO2ナルコーシスがあげられます。
他に頭痛・頭重感、呼吸困難、生あくび、脈拍数の上昇、血圧の上昇、動悸、発汗、皮膚の紅潮などといった症状が見られることもあります。
ここで高炭酸ガス血症の時に現れる症状もおさらいしておきましょう!

●酸素飽和度90%を目標に低濃度酸素投与からはじめ、NPPVや挿管下人工呼吸器療法までを視野に入れる。
*CO2ナルコーシスを恐れるあまり酸素投与をためらうことは危険!
特にⅡ型の呼吸不全の方に関しては、いきなり高濃度の酸素投与を行うのではなく酸素飽和度が90%となるように低濃度酸素投与から始めます。
CO2ナルコーシスを恐れ酸素投与をためらうのは危険であり、NPPVや挿管下人工呼吸器療法などといった換気を補助することまで視野に入れて酸素投与を開始します。
CO2ナルコーシスを予防するためには、血液ガス分析での酸素化(PaO2)の改善だけにとらわれず、患者の既往歴や循環の評価を行いながら、適切に酸素化を改善することが最も大切となります。
↓動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)
酸素中毒

●原因:活性酸素(フリーラジカル)による細胞・組織の障害。最悪の場合、死に至る。
●症状:悪心・嘔吐、四肢の知覚鈍麻、疲労、鎖骨下の不快感・痛み、呼吸困難
酸素中毒は、活性酸素(フリーラジカル)による細胞・組織の障害が原因で起こります。特に終末期の肺胞は不可逆性変化が出現し、低酸素血症が増悪します。これに対して高濃度の酸素を投与するとさらに肺障害が増悪し、最悪の場合、死に至ります。
酸素中毒は酸素分圧(PO2)と吸入時間に影響を受け、吸入気酸素濃度は関与しないと言われていますが、酸素中毒発生の閾値(PO2と吸入時間)は明らかではありません。
症状は、悪心・嘔吐、四肢の知覚鈍麻、疲労、鎖骨下の不快感・痛み、呼吸困難があげられます。
●PaO260Torr以上を目標になるべく早期に100%酸素吸入から離脱。
●吸入気酸素濃度50%以下(=安全な長期酸素投与が可能)を目指す!
酸素中毒の予防法は、PaO260Torr以上を目標になるべく早期に100%酸素吸入から離脱することです。
100%酸素吸入では6時間以内、70%酸素吸入では24時間以内の投与が望ましいと言われています。
安全な長期酸素投与が可能と言われている吸入気酸素濃度50%以下を目指します。
↓動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね(^^)
吸収性無気肺

大気を吸入した場合、肺胞に酸素が入り、毛細血管との間で拡散が行われても、肺胞内には窒素が残るため、肺胞は虚脱しません。

しかし、高濃度の酸素を吸入すると、窒素が酸素に置き替わってしまう。そのため、肺胞内の酸素が拡散によって血管内に吸収されると、肺胞内ガスがなくなり、肺胞が虚脱して無気肺が生じます。これが、高濃度酸素投与による無気肺発生のメカニズムです。
●原因:高濃度の酸素を吸入すると、窒素が酸素に置き換わり、肺胞内の酸素が拡散によって血管内に吸収されると、肺胞内ガスがなくなり、肺胞が虚脱して無気肺が生じる。
●症状:呼吸困難、頻呼吸
症状は呼吸困難、頻呼吸があげられます。
酸素中毒と同様!
●PaO260Torr以上を目標になるべく早期に100%酸素吸入から離脱。
●吸入気酸素濃度50%以下(=安全な長期酸素投与が可能)を目指す!
予防法は酸素中毒と同様です。
酸素中毒や無気肺は長時間の高濃度酸素投与が原因で起こります。
リハ介入時にすでに酸素投与がされている場合は、リハ介入前の酸素投与の状況(高濃度酸素投与の有無・時間、人工換気の有無など)や病状の経過についても把握しておき、酸素中毒や無気肺のリスクはないか確認しておきましょう。
動画でも説明していますので良ければ見てみてくださいね!↓
まとめ
今回は酸素療法の合併症についてでした。
✔酸素療法の合併症には、CO2ナルコーシス、酸素中毒、無気肺がある。
✔CO2ナルコーシス:【原因】肺胞低換気
【症状】意識障害・呼吸性アシドーシス・自発呼吸の減弱
【予防法】は酸素飽和度90%を目標に低濃度酸素投与からはじめ、NPPVや挿管下人工呼吸器療法までを視野に入れること。
✔酸素中毒:【原因】 活性酸素(フリーラジカル)による細胞・組織の障害。最悪の場合、死に至る
【症状】悪心・嘔吐、四肢の知覚鈍麻、疲労、鎖骨下の不快感・痛み、呼吸困難
【予防法】PaO260Torr以上を目標になるべく早期に100%酸素吸入から離脱し、吸入気酸素濃度50%以下(=安全な長期酸素投与が可能)を目指すこと。
✔無気肺:【原因】高濃度の酸素を吸入すると、窒素が酸素に置き換わり、肺胞内の酸素が拡散によって血管内に吸収されると、肺胞内ガスがなくなり、肺胞が虚脱することで起こる。
【症状】呼吸困難、頻呼吸
【予防法】酸素中毒と同様。
以上、酸素療法の合併症についてでした。
☑CO2ナルコーシスを予防するためには、血液ガス分析での酸素化(PaO2)の改善だけにとらわれず、患者の既往歴や循環の評価を行いながら、適切に酸素化を改善することが最も大切である。
☑酸素中毒や無気肺は長時間の高濃度酸素投与が原因で起こるため、リハ介入時にすでに酸素投与がされている場合はリハ介入前の酸素投与の状況や病状の経過についても把握しておく。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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