脈拍の基礎を理解し、臨床に活かそう!

基礎知識

今回は脈拍の基礎知識についてです。

脈拍は基本的には触診で測定しますが、パルスオキシメータや電動血圧計でも測定できるため一般の方でも測定できますし、医療従事者にとっては身近なバイタルサインの一つですね。

医療従事者であれば脈拍について知識として頭に入っているかと思いますが、脈拍の測定の仕方や脈拍を測定する際の注意点や考慮するべき点を見ていきたいと思います。

では脈拍の基礎知識についてみていきましょう!

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脈拍の正常値

脈拍の正常値は男性で65~75回、女性は70~80回が正常値の範囲であり女性の方が男性よりも多い傾向があります。

ただ年齢によっても正常値は異なり、乳幼児の脈拍は100回以上ですが中学生頃から一般成人では脈拍の正常値は60~100回へ落ち着いてきます。

また脈拍は活動とも関係があり、日中の脈拍は活動に応じて常に変動していますが、夜にかけて脈拍は減少する傾向にあります。

活動が下がる夜間に脈拍が60回未満となっても気にする必要はありません(脈拍が30回未満などあまりにも徐脈の時は除きます)。

脈拍は年齢や活動度に応じて個人差もあるため、やはり患者さんや利用者さんの普段の脈拍は知っておくとよいでしょう。

動画でも話しています⇓

脈拍①脈拍の正常値

脈拍の異常

脈拍の異常には主に数の異常(頻脈と徐脈)、リズムの異常、脈拍の大きさの異常(大脈と小脈)などがあります。

数の異常

頻脈

頻脈は成人で脈拍が1分間に100回を超えるときのことを言います。

日常的には運動、交感神経優位のときにみられます。

頻脈が見られる疾患:発熱、貧血、血圧低下、甲状腺機能亢進症、心不全、ショック(出血性、敗血症性)など。

徐脈

徐脈は成人で脈拍が1分間に60回未満のときのことを言います。

日常的には夜間に活動が下がったときに見られる場合があります。

徐脈が見られる疾患:頭蓋内圧亢進、甲状腺機能低下症、神経原性ショック、迷走神経緊張状態、ジギタリス中毒、心疾患(洞機能不全症候群、洞房ブロック、房室ブロック)、著明な低酸素症など。

ただし、アスリートなど普段からスポーツをされている方は特に上記のような疾患がなくても徐脈な方もいます(スポーツ心臓)。

臨床でのちょっとしたコツ👆

個人的な印象ですが、(急性期ではない)訪問などの初回評価でバイタルを測定した際に頻脈よりも徐脈が見られたときの方が緊急性・重大性が高い疾患が隠れていることが多い印象です(必ずしもではないです)。

実際に経験したのですが、既往に心疾患はないもののあまりに徐脈のため受診を促すと、Ⅲ度の房室ブロックだったことがあります。

初めてみる方が徐脈の時は何か疾患が隠れていないかな?とみることが多いです。
(頻脈の時も注意してみますが、緊張されていて頻脈となっていることもあるので緊張をほぐしたり、他のバイタルと合わせてみて判断することが多いです。)

リズムの異常

リズムの異常、つまり不整脈ですね。

リズムの異常には大きく分けて二つあります。

脈が抜ける・飛ぶ場合

♩♩♩(飛ぶ)♩♩♩(飛ぶ)♩♩♩ …

上記のように脈が抜ける・飛ぶタイプです。

代表的な疾患:(上室性・心室性)期外収縮。期外収縮の場合は脈拍数は正常です。

脈が不規則になる場合

♩♩♬♩♩♪♪♩♬♩♩♩♬…

上記のように脈が不規則になるタイプです。

代表的な疾患:心房細動。心房細動では、脈拍数が増えて頻脈になることが多いです。

脈拍の大きさの異常

脈拍の大きさとは、拍動の振り幅の大きさのことです。

ざっくりいうと、脈拍測定の際にしっかり触れるか、なかなか触れないかだと思ってください。

大脈

脈圧が大きいと振り幅が大きくなり、このことを大脈と言います。

参照

脈圧=収縮期血圧(最高血圧)ー拡張期血圧(最低血圧)

大脈は心臓の拍出量が多い時に見られます。

参照

拍出量:1分間に心臓が拍出する量のこと。

代表的な疾患:大動脈弁閉鎖不全症、甲状腺機能亢進症など。

また頭蓋内圧亢進時発熱時にもみられます。

小脈

脈圧が小さいと振り幅が小さくなり、このことを小脈と言います。

小脈は心臓の拍出量が少ない時に見られます。

代表的な疾患:大動脈弁狭窄症、心不全など。

また左心室の機能低下時、出血や脱水などにより循環血液量が減少したときにもみられます。

大きさの異常で見られる特徴的な脈

交互脈

交互脈とは大脈と小脈が交互に規則正しくあらわれる脈のことです。

発作性頻拍(発作性上室頻拍、発作性心室頻拍)の発作中にみられます。

奇脈

奇脈とは吸気時に小脈になり、呼気時に大脈となる脈のことです。

健常者でも吸気時と呼気時に脈拍の大きさはわずかに変化するものの、変化がわずかなのでほとんど観察できません。

奇脈では吸気時には収縮期血圧が10㎜Hgほど低下すると言われています。

奇脈が見られる特徴的な疾患:心タンポナーゼ、心膜炎。

気管閉塞、緊張性気胸、心筋炎、左室肥大、心不全、上大静脈閉塞症候群などにもみられます。

臨床でのちょっとしたコツ👆

私は安静時と運動時に脈を触れ、安静時・運動時それぞれでしっかり脈が触れているか・触れにくいか、を確認し、運動に伴って心拍出量が増大しているかどうか(運動に体がついていっているかどうか)判断することがあります。

脈拍の測定は単なる回数をカウントするだけではないのですね。

ちなみに、脈圧は心拍出量と相関があり、運動前後で血圧測定をする意味は心拍出量を知るということになりますね。

私は脈圧や脈の触れを運動時の指標としてもよく使っていました。

動画でも話しています⇓

脈拍②脈拍の異常

脈拍の測定の仕方

測定部位

臨床で最もよく測定される部位は橈骨動脈です。

橈骨動脈で測定できない場合や弱い場合には足背動脈総頚動脈で測定することもあります。

橈骨動脈で測定

橈骨動脈の位置は手関節の親指側です。

患者さんの手掌を上に向け、示指と中指の2本の指、もしくは示指、中指、環指の3本の指をそろえて橈骨動脈に当て力を加え過ぎないようにそっと触れます。

通常は左右差はみられませんが、大動脈疾患や末梢の血管疾患がある場合には左右ともに触知し左右差がないか確認しましょう。

足背動脈で測定

足背動脈の位置は足背の中央付近です。

測定方法は橈骨動脈の測定と同様です。

総頚動脈で測定

総頚動脈の位置は胸鎖乳突筋の前方側です。

総頚動脈は心臓に近く、急変時など末梢動脈が触れにくいときに必ず測定されます。

臨床でのちょっとしたコツ👆

脈拍を測定する場所で血圧を予測する方法

*橈骨動脈蝕知×:収縮期血圧80㎜Hg以下
*大腿動脈蝕知×:収縮期血圧70㎜Hg以下
*総頚動脈蝕知×:収縮期血圧60㎜Hg以下

測定時間

通常は15秒間測定し、15秒間で測定した回数×4回=1分間の脈拍数とします。

ただし、頻脈、徐脈、不整脈がある場合は1分間測定し正確な値を出すようにします。

脈拍測定で見る項目

脈拍数はもちろんのこと、脈拍の異常、すなわち数の異常(頻脈と徐脈)、リズムの異常(不整脈)、脈拍の大きさの異常なども測定時にみていきます。

動画でも話しています⇓

脈拍③脈拍の測定方法

脈拍から得られる情報

脈拍をみることで疾患がわかることもあります。

それだけでなく、普段の脈拍を知っていることでいつもとは何か違うといった異常にも気付きやすくなります。

いつもと違うと気付くことで運動をする前に運動をするか否かや負荷量を大きくするか、小さくするかも考慮できます。

また運動前後での脈拍の大きさの違いを知り脈圧と合わせてみることで運動に伴って心拍出量が増大しているのかどうかがおおよそ想定できます。

私は運動するか否かの基準の一つにもなり得ると考えます(特に心疾患を抱えている方に対しては大事な指標の1つです。)

単なる脈拍ですが、そこから得られる情報はいろいろありますね。

動画でも話しています⇓

脈拍④脈拍から得られる情報

まとめ

今回は脈拍の基礎知識を見てきました。

まとめ

✔脈拍の正常値は男性で65~75回、女性は70~80回で年齢や活動度に応じて個人差もある。

✔脈拍の異常には主に数の異常(頻脈と徐脈)、リズムの異常(不整脈)、脈拍の大きさの異常(大脈と小脈)などがある。

✔脈拍の測定は、通常は橈骨動脈で測定することが多く、通常は15秒間測定し、15秒間で測定した回数×4回=1分間の脈拍数とする。頻脈、徐脈、不整脈がある場合は1分間測定し正確な値を出す。

✔脈拍測定することで疾患が見つかったり、普段との違いに気付いたり、その日の運動負荷量の設定や運動の中止基準の指標の1つになり得る。

以上、脈拍の基礎知識でした。

脈拍についてすぐに使える視点・注意点!

☑正確に測定し、隠れた疾患に気付く。

☑患者さん、利用者さんの普段の脈拍は知っておく。

☑普段との違いに気付く。

☑その日の運動の負荷量の設定や運動の中止基準の1つの指標として他のバイタルサインと合わせて使う。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ご質問やご意見などありましたら、お問い合わせから宜しくお願い致します(^^)

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