「酸素飽和度90%以上キープ」の指示の意味を理解していますか?

基礎知識

今回は酸素飽和度の基礎知識についてです。

酸素飽和度はパルスオキシメータがあれば簡単に測れる医療従事者にとっては身近なバイタルサインの一つですね。

医療従事者であれば正常値などは知識として頭に入っているかと思いますが、なぜその値が正常値として使われているのかをヘモグロビン酸素解離曲線とともに理解し、酸素飽和度を測定する際の注意点や考慮するべき点を見ていきたいと思います。

では酸素飽和度の基礎知識についてみていきましょう!

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酸素飽和度とは

酸素飽和度

心臓から全身に血液を送り出す動脈の中を流れている赤血球に含まれているヘモグロビンの何%に酸素が結合しているかを示した値

ちなみに…

動脈血酸素飽和度=SaO2:動脈血液中で赤血球に含まれているヘモグロビンの何%に酸素が結合しているかを示した値

経皮的酸素飽和度=SpO2:皮膚を通して赤血球に含まれているヘモグロビンの何%に酸素が結合しているかを示した値

厳密にはSaO2≒SpO2ですが侵襲の少ないSpO2を測定することで動脈血液中の酸素飽和度も知ることになります。

動画でも話しています⇓

酸素飽和度①酸素飽和度とは?

『SpO290%以上キープ』の根拠:ヘモグロビン解離曲線

臨床ではSpO290%以上キープという指示が出たり、SpO290%を切らない範囲でリハビリなどの指示を医師からもらうことが多いです。

なぜSpO290%以上なのでしょうか?

ここでヘモグロビン酸素解離曲線を見てみましょう。

上の図はヘモグロビン酸素解離曲線といい、図の通り酸素飽和度と酸素分圧の関係は直線ではなくS字状曲線となります。

PaO2が60Torr以下(=SpO2 90%以下)になると赤血球中のヘモグロビン酸素解離曲線の傾斜が急峻となりPaO2のわずかな低下で大きな酸素飽和度の低下をきたします。

組織での酸素の供給は動脈血と組織の酸素分圧の差で行われ、その供給量は酸素飽和度の差に依存します。

つまり、組織との酸素飽和度の差が小さくなるため、組織で受け取ることのできる酸素の量が減少し、組織での酸素不足が起こります。

動脈血の酸素分圧が低いと組織は酸素不足になる

PaO2が60Torr以下(=SpO2 90%以下)の状態を呼吸不全とするのはこのためで酸素供給が必要となります。

動画でも話しています⇓

酸素飽和度②ヘモグロビン酸素解離曲線~SpO₂90%以上キープの根拠~

酸素瀑布(Oxygen cascade)

動画で話しています⇓

酸素飽和度③酸素瀑布(Oxygen cascade)

酸素飽和度をパルスオキシメータで測定する際の注意点

パルスオキシメータでの経皮的酸素飽和度(SpO2)の測定は、赤色光と赤外光の二つの光が指を通過する光の量で測定されます。

指には動脈のほかに静脈や間質組織があり、それぞれ酸素飽和度は違います。

他の組織とは違い動脈に特異的なのは脈を打っていることであり、動脈の脈を検知することで動脈の酸素飽和度を測定しています。

なので、

『指(爪〉に光を当てて動脈の脈を検知して測定する』

この過程のどこかを邪魔すると正確な値が測定できなくなります。

以上を踏まえて酸素飽和度を見る際の注意点です。

酸素飽和度測定時の注意点

①測定部位は動かさず静止しているか、体動直後ではないか→測定部位が動いていると正常に測定できない。
②爪にマニキュアが塗っていないか。爪白癬などはないか→爪の透過性を低下させ正常に測定できない。
③測定機器が外れていないか→測定部位に当たっていないと測定できない。
④強い光の下で測定していないか→赤外線をあてて測定しているため強い光が測定を邪魔する。
⑤手足が冷たくなっていないか、測定部位がむくんでいないか→循環が悪いと正確に測定できない。
⑥しっかり動脈拍動を検知しているか、動脈拍動を検知してからしばらくした値を読み取っているか→動脈拍動が検知されていないと正確な値が測定できない。

パルスオキシメータで測定する際には上記に注意しましょう!

動画でも話しています⇓

酸素飽和度⑤パルスオキシメータ測定時の注意点

必ずしもSpO290%以上=問題なしではない!

酸素飽和度をパルスオキシメータで測定する際の注意点を守った上でSpO290%以上だったので酸素化は正常!と判断してよいのでしょうか?

貧血の場合

SpO2の値は酸素が結合しているヘモグロビンの割合(%)をあらわしているため、ヘモグロビン自体が少ない状態(=貧血)では、SpO2の値が正常でも血液中の酸素の量は少ない場合があります。

循環不全の場合

血液による酸素の運搬は血液中の酸素とともに、血液を組織に送り出す心臓の働きによっても左右されます。

貧血がなく、SpO2が正常であっても心不全などがあると組織の酸素化は悪くなることがあります。

一酸化炭素中毒の場合

パルスオキシメータでは酸素に結合したヘモグロビンと一酸化炭素に結合したヘモグロビンを区別できません。

一酸化炭素中毒や喫煙直後では正確な値が測定できない場合があり注意が必要です。

低酸素症と低酸素血症の違い

低酸素症と低酸素血症は以下の図のように使い分けをしています。

リハビリをするスタッフは低酸素血症(血液)だけみるのではなく、低酸素症(組織:低酸素血症、貧血、循環不全など)も頭に入れておいてくださいね!

動画でも話しています⇓

酸素飽和度④低酸素症と低酸素血症

まとめ

今回は酸素飽和度の基礎知識を見てきました。

まとめ

✔酸素飽和度とは心臓から全身に血液を送り出す動脈の中を流れている赤血球に含まれているヘモグロビンの何%に酸素が結合しているかを示した値。

✔『SpO2 90%以上』の根拠は、PaO2が60Torr以下(=SpO2 90%以下)になると赤血球中のヘモグロビン酸素解離曲線の傾斜が急峻となり、PaO2のわずかな低下で大きな酸素飽和度の低下をきたし、組織が低酸素となるため。

✔パルスオキシメータで測定する際の注意点は指(爪〉に光を当てて動脈の脈を検知して測定するうちのどこかを邪魔しないよう測定すること。

✔SpO290%以上でも貧血、循環不全、一酸化炭素中毒などには注意が必要。

✔血液の酸素欠乏状態よりも組織の酸素欠乏状態を意識。

以上、酸素飽和度の基礎知識でした。

上記を踏まえて酸素飽和度についてすぐに使える視点、注意点です↓

酸素飽和度についてすぐに使える視点・注意点!

☑酸素飽和度の基礎知識をもとに医師が出す指示の意味を理解する。

☑パルスオキシメータで正確に測定する。

☑正確に測定できないときは測定できない理由は何かを考える→身体状態を知るヒントになることがある。

☑酸素飽和度が医師の指示範囲内であっても貧血、循環不全、(一酸化炭素中毒)などがないかも合わせてみる。

☑血液だけをみるのではなく、組織の酸素化はどういう状態かも考慮する。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ご質問やご意見などありましたら、お問い合わせから宜しくお願い致します(^^)

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