呼吸リハのすすめのりかです。
今回は呼吸困難感の評価についてです。
呼吸器疾患の方にリハビリをする際、安静時や労作時に呼吸困難感を訴えるという場面に多く遭遇します。
この記事では

そもそも呼吸困難感とは何?
呼吸困難感の評価法は何があるの?
について説明していきたいと思います。
それでは見ていきましょう!
呼吸困難感とは?
そもそも呼吸困難感とは何でしょうか?
呼吸運動に際して不快感や努力感を伴うこと。
この自覚に対する本人の身体的反応や心因反応も含む。
ただし、呼吸困難感は自覚症状のため客観的評価はできません。
呼吸困難感は客観的に評価ができないから無視しても良いかというとそうではないですよね。呼吸器疾患の方と話していると呼吸困難感をどうにかしてほしいとの訴えが多いのも事実です。
呼吸困難感の訴えがあるにもかかわらず、SpO2が問題ないからと「問題なし」にするのではなく、「なぜ呼吸困難感が起きているのか?」を考えることで呼吸障害の原因の一つが見えてくることもあります。
次の段落でお話しする呼吸困難感の発生機序も呼吸障害の原因の一つを考えるときに参考にしてください。
●労作などで換気亢進を自覚しても不快感や努力感を伴わない場合。
●不快感や努力感を伴っていても、その程度が労作に見合った一過性のものと自覚できるような場合。
一般的には息切れと呼吸困難は同義とされている。
呼吸困難感の発生機序
呼吸困難感の発生機序は諸説あり、化学受容器関与説、気道内受容器説、呼吸筋長さ-張力不均衡説など多くの仮説が提唱されてきましたが、いずれの仮説も呼吸困難のメカニズムを説明するには不十分であり、明らかにされてはいません。
現時点で有力な説は、中枢ー末梢ミスマッチ説(または、出力ー再入力ミスマッチ説)です。
呼吸中枢から呼吸筋への運動指令(出力)と受容器から入ってくる求心性の情報(入力)との間に、解離またはミスマッチが存在する場合に呼吸困難が発生するという説。

上の図で中枢-末梢ミスマッチ説を説明します。
呼吸中枢である延髄から呼吸筋に対して呼吸をするよう運動指令が出て、その指令のもと、肺・呼吸筋が呼吸運動を行います。
肺や気道にある機械受容器や延髄や大動脈体や頸動脈体にある化学受容器が呼吸運動を起こした後の求心性の情報を呼吸中枢である延髄へ送ります。
中枢では出した運動指令と入ってきた求心性の情報を見比べ、解離やミスマッチが起こった際にその情報を大脳皮質感覚野に送ることで呼吸困難を感じるとされています。
つまり、
●ある一定量の換気を起こそうと運動指令を出し呼吸筋が活動したにもかかわらず、活動に見合っただけの変化が機械的・化学的に見られなかったとき
●かなり運動指令を出さないと呼吸中枢が求めている機械的・化学的変化が得られないとき
呼吸困難感が生じるということになります。
問診のポイント
呼吸困難感は自覚的なもので客観的には評価できないとお伝えしました。
自覚的なものである呼吸困難感を問診する時のポイントです。
●いつ、どんな時におこるか?
●日常生活に支障をきたしているか?
●どの程度の苦しさか?
●どのくらい休むと回復するか?体位変換、リラックス、投薬などで軽減するか?
間接的評価法
問診で得られる情報だけでは聞きとり手の聞き方などによってかなりの差が生じます。
そこで間接的・直接的に評価する方法があります。
間接的評価法について述べていきます。
MRC(medical research council)息切れスケール

臨床で見られる呼吸困難感の重症度を0~5までの6段階で評価します。
F-H-J(Fletcher-Hugh-Jones)の分類

臨床で見られる呼吸困難感の重症度をⅠ~Ⅴ度までの5段階で評価します。
どちらも医療スタッフが問診して評価する方法ですが、国際的にはMRCが標準的に使用される傾向があります。
直接的評価法
次に直接的評価法です。
修正ボルグスケール

0~10までの12段階(0と1の間で0.5を含むため)の比例的尺度で呼吸困難の程度を定量的に示す、簡便で臨床で使用しやすいスケール。
主観的に感じる呼吸困難感に近いものを選んで数字で答える(例えば、中くらいの呼吸困難感ならば3)。
VAS(visual analogue scale)

100mmの水平直線上に呼吸困難の程度を直接マーキングし評価します。
まとめ
今回は呼吸困難感の評価についてでした。
✔呼吸困難感とは呼吸運動に際して不快感や努力感を伴うこと。
✔呼吸困難感の発生機序は明確にはなっていないが、呼吸中枢から呼吸筋への運動指令(出力)と受容器から入ってくる求心性の情報(入力)との間に、解離またはミスマッチが存在する場合に呼吸困難が発生するという説(中枢-末梢ミスマッチ説)が有力である。
✔呼吸困難感は自覚的なものだが、問診や直接的・間接的評価法によって評価することは可能である。
✔間接的評価法には、MRC息切れスケールやF-H-Jの分類がある。
✔直接的評価法には、修正ボルグスケールやVASがある。
以上、呼吸困難感の評価についてでした。
☑呼吸困難感は自覚的なものだが、問診や直接的・間接的評価法で評価することは可能なので、SpO2などの数字だけでなく患者さんや利用者さんの訴えにも耳を傾けることが重要。
☑SpO2など数字上は異常がないにもかかわらず呼吸困難感を訴える方は呼吸困難感の原因を推察することで呼吸障害の原因の一つがわかることもある。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ご質問やご意見などありましたら、お問い合わせから宜しくお願い致します(^^)
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